ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

以上小さいので、プルトニウムなどの超ウラン元素を生み出さないから、核拡散防止上決定的に有利である。【その3】高放射能で軍用に不適:トリウム炉から得られる核分裂性U233は、必ずU232を含み、その強烈なガンマ線は遮蔽不可能で検出は容易である(U235やPuなどはガンマ線が弱い)。U233燃料は、鉛25cm、コンクリート1mを貫通する極めて強いガンマ線を出し数時間で致死量となるから、核兵器にできない。監視検知などにも好都合だが、複雑な遠隔操作を要する「固体核燃料」には適さない。〔必要な技術要素の概要〕1最適な液体核燃料の熔融塩:原発には、反応が遅く複雑な「固体」や大容量で高圧になる「気体」よりも、作業媒体として「液体」がよい。最適なのは、弗化リチウムと弗化ベリリウムの混合塩(LiF-BeF2)を溶媒にし核燃料弗化物を溶かした「熔融弗化物燃料塩」であり、化学的に極めて安定不燃な常圧液体である。放射線による照射損傷を全く受けず、1液相で核反応・熱輸送・化学処理用の優れた3機能を兼ねる。500℃以下に冷えれば放射性物質閉じ込めに有効で安定なガラス固化体となる。2増殖発電炉方式の不採用:理想といわれているが大型かつ複雑化しても増殖能力は不足である。図1(D)の様に倍増時間を約10年にして世界に展開利用するには、核燃料増殖施設と発電炉を分離した上での組合わせ(協働体)によって、高性能の燃料増殖サイクルを構築するほかはない。これを「トリウム熔融塩核エネルギー協働システム」と名付けた。3発電炉FUJI:1985年に基本構成を確立したが、機能・構造・運転・保守が単純で、小型化しても原発として理想の“核燃料自給自足”能力を持つ「熔融塩発電炉(愛称:FUJI不二)」を実用化させる。原子炉容器内部は、常圧の熔融塩と頑丈な裸の黒鉛減速材(融点4千度)のみで単純に構成される。漏洩して燃料塩がなくなれば炉は止り、再臨界・炉心熔融などは固体核燃料でないから考えられず、過酷事故は原理的に起きない極めて安全な原発である。例えば図2および図3に示す小型熔融塩発電炉(FUJI)のように、15万kWe発電規模の炉本体は直径約5.4m高さ約4mの単純な熔封タンクである。炉寿424