ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回優秀賞そむけたくなるような容貌。母親はショックで行方不明になったという。この赤ん坊は一体、将来どのように人生を歩んでいくのか。猪口は指摘する。「戦争は外交の失敗の結果であり、戦場は議場の失敗の形態である」「平和とは希望して訪れるものではなく、戦略的に深く画策し、猛烈な外交によって構築し、(中略)継ぎ目のない連続的努力によってのみ、辛うじて確保されるものである」(猪口、前掲書)。多国間外交の舞台となる国際機構として中心的役割を果たす国連に課された21世紀の宿題は、引き続き重い。国連創設60周年、そして終戦60周年、この記念の年は、その認識を新たにすべき年である。加盟国の外交活動は、民主主義国においては、各国の民意を踏まえた上で展開される。平和な先進国で生まれついた人間は、幸いにも、基本的人権を尊重され、貧困や飢餓に苦しむことなく、教育機会を当然の権利として与えられ、「不安からの自由」「欠乏からの自由」を享受する生活を送ることができる。幸いな国の国民として、「外交の失敗」「議場の失敗」を防ぐ努力を、自らの立場において追求したい。さらに、それを民意として昇華させ、国家外交に反映させる努力を重ねたい。それが先進国の“草の根市民”としての責務であると考える。「不安」や「欠乏」に脅かされることなく送る平穏な日常においては、ともすれば民族紛争やテロ事件等、悲劇を伝えるテレビ画面を眺めるだけの傍観者の立場に陥りがちである。そうした傍観者の立場をしばし離れ、本稿執筆の機会が得られたことは、国連問題の専門家でも研究者でもない筆者にとり、誠に有益である。参考文献「国際連合」明石康(1985)岩波新書「国連のしくみ」吉田康彦(1995)日本実業出版社「戦略的平和思考」猪口邦子(2004)NTT出版409