ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回優秀賞常任理事国入りに向け、白熱化している。先に指摘した通り、国連の組織的特徴を踏まえれば、現行の意思決定メカニズムにおける中立性担保の命題は、容易ならざる問題である。では、常任理事国を拡大する場合、どのような主体が新たに参加することが、中立的意思決定の観点から望ましいのであろうか。そして、日本の常任理事国入りが実現した場合、国連の意思決定メカニズムにどのような影響をもたらすであろうか。先に論じた中立的意思決定の構成要件、a・bを踏まえれば、現在のP5と異なる立場の加盟国が、新たに意思決定に参加する機会を生み出すことが、中立の目指すべき方向性である。常任理事国の拡大については、意思決定に時間を要し、安保理審議が非効率化することを危惧する声もある。確かに、参加者数が増えれば、意思決定プロセスにおいて時間的コストが拡大する可能性は否定できない。PKO派遣等、国際的紛争の解決に向け、緊急性が求められる安保理活動にとり、悩ましい問題ではある。しかし、設立当初に比べて加盟国の総数が4倍近くに増えている現状に加え、旧連合国中心という組織構成を踏まえれば、効率的な議事運営を確保できる前提において、できる限り多様な主体が相当数参加することが望ましい。両者のバランスをとりつつ、常任理事国拡大の余地は、充分にあるものと思われる。また、「衡平な地理的分配」の観点も重要である。非常任理事国の選出においては、憲章がこれを義務付けているが、非選で永久的地位にあるP5には、導入の余地がない。既に見た通り、安保理の意思決定のしくみが欧米諸国主導である以上、新たな参加者はそれ以外の地域から選出されるべきであろう。このように、現行の枠組みに内包される質・数の両側面における非中立的要素を緩和する拡大策が、中立的意思決定の実現策でもある。この観点から、アジア地域に位置し、敗戦を経験し、その上、世界第2位の経済大国として財政貢献も果している日本の常任理事国入りについて、拒否される理由は特段、見当たらない。さらに、日本の参加は、意義深い独自性を有している。唯一の被爆国という悲劇を背負いつつ、「非核3原則」を国是とし、407