ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
408/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている408ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

エコノミー、グローバリゼーションの時代にあっても、依然として主権国家が国際社会の構成主体であり、国連の枠組みも主権国家中心主義に代わる選択肢は今のところ他にない。この枠組みが維持される限り、その意思決定も各国の国益追求の“草刈り場”という性格を塗り替えることは困難といえよう。第二に、意思決定現場の人的環境の観点においては、国連組織が人間組織であり、その意思決定が諸個人の判断の集積である点に着眼し、意思決定現場の最前線に立つ諸個人の身分を考察した。意思決定メカニズムにおいて重要な役割を演じる代表部員は、所属国法に基づいた職業的使命を負いつつ、「国民全体の奉仕者」として所属国の国益実現を目指す職務遂行を義務付けられる。こうした職責が課せられる以上、国家公務員という身分上の限界を抱える彼(彼女)らの職務遂行は、国際的な合議機関としていかなる国益も代表しない国連組織における中立的意思決定と、真っ向から衝突する。この意味合いにおいて、人的環境の側面においても、非中立的要素を有するといえる。一方、意思決定現場において「サポート役」と位置付けられる国際公務員は、代表部員と異なり国連組織に対して忠誠を誓うが、その立場は二律背反的性格をもつ。明石が提起するように、所属国の国家的利益と、国際的利益が衝突する場合、その内心は引き裂かれ、複雑なジレンマに陥る。しかし、人間が個人的な価値観から自由ではいられず、その価値観から導き出される彼(彼女)の思考・行動が経験知の産物であるという内面的要素を鑑みれば、諸個人において絶対的中立は成立し得ない。自らの個人的な価値観はそれとして、あくまでも国際公務員としての職業的良心にたち返り、自らの良心において中立を目指す態度こそが、憲章第100条が意図する精神であるといえよう。2安保理改革が中立的意思決定にもたらす意義現在、進行中の国連改革の議論においては、安保理改革が大きな焦点となっている。昨年末、アナン事務総長の諮問機関「ハイレベル委員会」が提出した報告書においては、安保理改革に向け、2種の選択肢が示されたが、その一つは、常任理事国(拒否権はなし)を11ヶ国に拡大する改組案である。これを受け、マスコミの論調は、宿願である日本の406