ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

誕生する85年まで、アフリカを中心とした新興独立国の台頭により先鋭化した南北対立を背景に、英米仏3国で大半を占めている(全93件中78件)。また、行使しないまでも、これをちらつかせることで他の加盟国に圧力をかけるケースもある(closet veto)。拒否権行使は、東西・南北いずれの対立構図においても、自国が所属する陣営に有利な政治的立場を要求するものであり、国連の意思決定メカニズムにおいて、国益追求のあらわれ以外の何ものでもない。こうして総会と安保理、双方の意思決定のしくみを比較考察すると、国連の意思決定メカニズムにおいて強制力をもつ重要な意思決定は、P5の構成が指し示す通り、旧連合国、それも欧米先進国中心主義に立脚しているといえる。吉田によれば(「国連のしくみ」、吉田康彦)、安保理の意思決定においては、まず米英両国の意見調整を経た後に仏に打診、3国で固めた骨子案を中露両国に示し、修正等を加え、5大国案としてまとめる。これを、採択に必要な残り4票の獲得のため時にはアメ(援助等)をちらつかせつつ非常任理事国と協議、その後、正式な決議案として公式会合にかけるのが大方の場合である。<安保理の意思決定のしくみ>非公式協議公式協議米英両国で→米英仏→3国による骨子案について→5大国案について非→決議案提出、採択意見調整で協議中露両国と協議常任理事国と協議国連が元来、第三次世界大戦の防止を目的として、大国協調の下で集団安全保障体制を構築してきた歴史的背景を考えれば、当然ともいえる組織的性格であるが、このような意思決定メカニズムにおいて、果して中立的意思決定が可能であろうか。中立的意思決定は、先の中立性の構成要件を踏まえると、a.当事者・利害関係者でない第三者的立場の主体が、b.相当数意思決定に参加することで担保されうる。aについては、紛争の平和的解決(第6章)及び地域的取極関連(第52条第3項)に基づく安保理の決400