ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回優秀賞全加盟国が集い、憲章に定める諸事項を討議する総会においては、各加盟国が等しく1票をもち、その意思決定は、投票する構成国の3分の2または過半数をもって表決する(第1 8条)。一方、「国際平和・安全の維持」に関する主要な責任を負う安全保障理事会(以下、安保理)では、事情が異なる。まず、構成国は15ヶ国に限定され、そのうち常任理事国である米英露仏中5ヶ国(以下、P5)は非選、残りの非常任理事国10ヶ国は、2年任期で総会で選出される。後者は、「衡平な地理的分配に特に妥当な考慮を払って」選ばれることとなっており(第23条第1項)、2004年の理事国リストを見ると、各大陸からほぼまんべんなく選出され、数の上では安保理総体としてバランスのとれた構成になっている。理事国はみな、総会同様、等しく1票をもち、表決も多数決の原則に基づくが(15ヶ国中9ヶ国)、P5には特権的な拒否権が認められている。手続事項以外の決定は、「常任理事国の同意投票を含む9理事国の賛成投票によって行われる」(第27条第3項)ため、P5のうち1ヶ国でも反対に回れば、9ヶ国以上の賛成投票をもってしても表決できない。このように、総会と安保理では意思決定主体のメンバー構成や表決方法が異なるが、さらに重要な相違点は、両者の権限の格差である。総会の決定は、加盟国・安保理に対し、勧告を行うか注意を促すレベルに留まる上(第10~11条)、その勧告も、安保理の任務遂行中はその要請なくしてできない(第12条第1項)。一方、安保理の決定に対し加盟国は、これを受諾し、その履行に同意することが定められている(第25条)。つまり、全191ヶ国が参加する総会の意思決定は勧告レベルで拘束力をもたないが、加盟国全体の10分の1にも満たない15ヶ国で、しかも、わずか5ヶ国にのみ特権的な拒否権を認めて行う意思決定が、全加盟国を拘束する。P5の拒否権については、かねてから非民主的との批判が根強い。冷戦時代は特に、米ソ2大国が拒否権行使を争い、安保理審議が空転することも少なくなかった。1946年代~65年に行使された拒否権は、そのほとんどが東西陣営の対立を背景にしたソ連によるものであり(全114件中106件)、その後は、冷戦終了をもたらしたゴルバチョフ政権が399