ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

2.中立的意思決定に向けて1中立的意思決定の限界前節における検証の結果、第一に、主権国家の合議体の観点については、国家が国連に加盟する目的が国益の実現である上に、非中立的な性格の合議体組織において中立的意思決定を行うことには、限界がある。第二に、意思決定現場の人的環境の観点については、意思決定メカニズムにおいて重要な役割を演じる代表部員の立場は、国際組織の中立的意思決定と衝突するため、人的環境の側面においても非中立的性格を帯びる。一方、サポート役の国際公務員の立場は二律背反的性格をもち、所属国の国家的利益と、国際的利益が衝突する場合、その内心は引き裂かれる。しかし、人間は個人的な価値観から自由でいられない。自らの個人的な価値観はそれとして、国際公務員としての職業的良心にたち返り、自らの良心において中立を目指す態度が、憲章の精神であるといえよう。2安保理改革が中立的意思決定にもたらす意義現在、安保理改革が大きな焦点となっているが、常任理事国を拡大する場合、現在の5カ国と異なる立場の加盟国が、新たに参加することが望ましい。また、「衡平な地理的分配」の観点も重要である。アジア地域に位置し、敗戦を経験した日本の常任理事国入りは妥当性がある。また、日本は、唯一の被爆国、「非核3原則」、「武器輸出3原則」、そして軍需によらず民需の発展によって経済復興を成し遂げたという意義深い独自性をもつ。こうした日本が常任理事国としてその独自性を発揮すれば、国連の中立的意思決定に貢献できる可能性は高い。ただし、常任理事国入りを自ら目指す以上、国連外交の場において日本の存在価値を高める外交能力が問われることを覚悟すべきである。過去の2国間外交の実績を多国間交渉の場で活用しつつ、「議場大国」への道を目指すことが日本の国益にも合致する。396