ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

表を含むべきであったという議論も存在する52。しかし、それでもSNCは不完全ながらカンボジアの『主権を体現』する地位を与えられており、それを最大限尊重する姿勢を見せることで、明石氏は、「気の進まない人びとに民主化を押し付けるというジレンマから免れることができた」と語っている。SNCという本来の主権構成団体を重視する姿勢は、カンボジア国民に対してUNTACが中立な介入者であるいう意識を植え付けるのに効果的であったのだ。第2次大戦後、アメリカが日本に導入した民主主義が、それ自体は優れた点が多かったにも関わらず日本人に外からの押し付けと思われたために抵抗に遭ったりしたこと、そしてイラク戦争後のイラクで、現在アメリカ軍が激しい抵抗にあっていること53を考えると、SNCを通したカンボジア国民自身の決定という外観を心がけたことは、UNTACへの信頼を生み出すために大変有効だったと考えられる。2-C多様な支援国の獲得UNTACが信頼を獲得し、中立だという外観を維持する上で大切であったもう一つの要素に、個別の協議や合意を実施する過程で、様々な関係各国の支援を獲得したということが挙げられる。例えば、安保理の常任理事国は常にUNTACを支持し和平プロセスに関与し続けたし、オーストラリア、インドネシア、日本、タイといった国々は二国間外交を通じてポル・ポト派を和平プロセスに再び参加させる努力を行った。さらに、こうした活動の前提として、UNTACの活動と平行してカンボジア周辺国の支援国会議が繰り返し開催された。また、軍事要員ならびに文民要員の派遣という形でも、様々な国がUNTACの活動に加わった。もちろん、日本がUNTACからの要請に気前よく応えることができたのはUNTACのトップである事務総長特別代表が明石氏であったことと無縁ではないし、オーストラリアにはUNTAC軍事部門司令官であったサンダーソン氏がオーストラリア人であったことで支援を出しやすかったという事情があった。しかし、こういった特別な事情による近隣大国の継続的なサポートのみならず、ASEAN諸国をはじめ、40以上の国々がUNTACに軍事要員や警察要員を派遣して活動に加わり、また支援したと36652 一柳直子「国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)活動の評価とその教訓――カンボジア紛争を巡る国連の対応(1991―1993)(2・完)」『立命館法学』第253号(1997年第3号)、p.58753 2003年11月4日現在、戦争終結宣言が出された後のアメリカ兵死亡者は130人以上に上る。http.://news.bbc.co.uk/1/hi/world/middle_east/3240145.stm