ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回最優秀賞司令官の地位を占め、ラナリット殿下とフン・セン首相がともに副首相に就任するというもので、実質的にはフンシンペックが第1党であるという選挙結果を無視してフンシンペック・人民党両派対等の政権を樹立するという構想であった。シアヌークがその後この提案を取り消すなどという経緯があったが、UNTACも内部での意見対立をまとめてこの構想を認め、結局ラナリット、フン・センが共同首相として内閣を構成することとなった。UNTACはカンボジアの実情を考えると法的妥当性に問題を有するこの構想もやむをえないという判断を下したものと見られる。しかし、これは、中立性という観点から大きな問題を孕む。この選挙後の政権創出過程は、フンシンペックが第1党という選挙結果を軽視するのみならず、選挙に参加しなかったシアヌークに大きな権力を集中するという点でも、パリ協定からみてかなり無理なところがあるからである。実際、フンシンペックが第一党であるのに、なぜ人民党との閣僚配分をフィフティ・フィフティにしたのかという批判が、一部の西欧諸国から浴びせられた41。また、UNTACの中にも、サンダーソン司令官など、シアヌーク裁定への批判派が存在した。3中立性を放棄したとも評価されかねないUNTACのこの対応の背景には、51議席で第二党に終わりはしたものの、プノンペン政権を担う人民党には13年の行政の実績があり、しかも独裁的要素は濃いが軍と警察の大半を掌握している以上、これを敵にまわしてカンボジアの安定はありえないという判断があった42。しかし、フンシンペックからしても本来フンシンペックと人民党がフィフティ・フィフティの勢力となる政権を構成することは受け入れられないはずであるし、中立性の揺らぎは常に当事者のなかでUNTACの介入者としての資格を疑問視する声につながりかねないはずである。にもかかわらず、UNTACがこうした対応を採ることが可能であったのはなぜであろうか。41明石、前掲書p.11342明石、前掲書p.114361