ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第21回最優秀賞「国連平和維持活動における中立性再考~UNTACを例として~」前田振一郎はじめにカンボジアにおける国連平和維持活動でUNTAC(国連カンボジア暫定統治機構)の特別代表を務めた明石康氏は、UNTACを評して、その規模、多面性、そして国連に与えられた権限などにおいて、従来の平和維持活動に比べて野心的なものであり、かつ壮大な実験であったと述べている1。結果としてUNTACは89.56%という高投票率を得て総選挙を実施し、その後のカンボジアの再建に大きな役割を果たした。本稿は、UNTACの活動を中立性という観点から分析、評価することを試みるものである。UNTACが中立性という価値に対しどのようなアプローチを採ったのか。地域紛争への介入において中立性という価値はどのような役割を果たすのか。UNTACの具体的過程をたどりながら、以下考察を進める。第1章中立性の揺らぎ1-A PKOにおける中立性原則国連は発足以来、平和創造(Peace Making)、平和維持活動(Peace KeepingOperation)、平和強制(Peace Enforcement)という三つの国際平和へのアプローチを採用してきた。国連憲章第6章を根拠とする「平和創造Peace Making」は、同章が「紛争の平和的解決Pacific Settlement of Disputes」とされていることからも明らかなように、紛争の最終的な解決を目指すものである。「平和創造」という言葉自体、実質的には憲章第6章の機能を比喩的に表現したものに他ならない2。また、憲章第7章を根拠1『世界』1993年10月号インタビュー「カンボジアP.KOの成果」2香西茂『国連の平和維持活動』(有斐閣1991) p.4347