ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

国連は非力であっても、常に外交の表舞台として世界平和の流れをつくり、方向づけをするという人類の使命を担っている。近代国際社会が、世界平和維持システム作りに着手して一世紀、現在の国連が誕生して半世紀を越えた。加盟国が超大国アメリカをはじめとして、国を私物化するような弱小独立国まで190余カ国が、それぞれに一票の投票権を持って構成されている。国連の主要機関の一つに、平和と安全保障に関する責任と権限を持つ安全保障理事会が十五の国で構成され、五つの国が常任理事国として拒否権を与えられて国際社会をリードしている。今日では、大国といえども国連を無視したり、脱退するような動きは影を潜め、国際協調の視点から拒否権の行使も少なくなって、話し合いを求める傾向が強くなってきたことは、力の支配から平和路線へと向かう世界の当然の流れとは言え喜ぶべきことである。安全保障の面では、世界の現状はアメリカ一極主義に変わり、世界の多くの国も世界警察としてのアメリカの軍事力を認めているが、イギリスが植民地時代の大英帝国の座から退いたように、アメリカの繁栄が、国民生活のレベル向上となって兵員不足をひき起こし、アメリカ一極主義の責任が果たせなくなってくる可能性がある。歴史的には、大国は弱小国や民族に干渉しながら近代国家をつくり、弱小国や民族はその庇護の下で生活権を確保してきた。国連が関与した朝鮮戦争や湾岸戦争においては、国連の対応は協議が長引いて参戦が遅れるために、アメリカの参戦を得てのち追認するプロセスで国連も認めてきた。これに対して、アフガニスタンやイラクに対する戦争は、テロ撲滅と大量破壊兵器の放棄という大義に、アメリカのナショナリズムが独走して国際的な協調路線はとれなかった。だからといって今、アフガニスタンやイラクからアメリカが引ける状態にはない。中東情勢の不安定がテロの脅威となって世界は緊張状態にある。軍事力による世界戦略にかげりを感じたイギリスとアメリカの粘り強い努力により、リビアは核開発の放棄を世界に宣言し、イランもIAEAの査察受け入れの意向を示している。北朝鮮の核開発放棄に向けた六ヶ国協議も進行中である。世界は今、安全と平和に向けた話し合いによる理解と協調路線に大きく方向を変えつつある。この流れの中で、アメ338