ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回佳作二、悲劇が悲劇を呼ぶイスラエル問題には二つの側面がある。一つはひとつの民族が、国家をつくるために他の民族を否定する事実と、もう一つは、この国家的殺人を大国が黙認しているという事実である。ユダヤ民族は、2000年にわたる迫害と流転の歴史の最終章を、ナチによるアウシュヴィッツの悲劇で閉じてイスラエルを建国を果たした。パレスチナの地に生まれたユダヤ民族は、選民思想の故に他民族との乖離を生み、キリスト教誕生までの1000年を支配者の圧政と移住の繰り返しで苦難に耐えてきた。紀元70年にイスラエルの地を追われて以来建国まで民族苦難の離散が始まった。イベリア半島に逃れて住み着いたユダヤは、1391年反ユダヤ感情の高まりで発生した暴動で国外逃亡や偽改宗者が出た。これも一時的で1492年には、全てのユダヤ人がスペインから追放されて北アフリカやヨーロッパ諸国に移り住んだ。1881年にはロシアのユダヤ人が迫害を逃れてアメリカへ移住した。欧米諸国に移り住んだユダヤは苦難から解放され、色々な分野で活躍するようになったが、土地の所有を認められなかったために商業や金融面で高い才覚を発揮した。有名な「ヴェニスの商人」である。契約不履行に対し、相手国に肉一ポンドを要求するシャイロックの場面は、キリスト教徒に対する虐げられたユダヤ人の恨みの現れであり、今日のシャロン首相と重ならないだろうか。追われても追われても他民族の中に入って行って、偽同化しながら生き抜いてきたユダヤ民族2000年の血に、シャイロックからシャロンへと永々と流れるユダヤ民族の怨念の歴史を見る思いがする。このように、ユダヤ人は同化せず別個の民族として存在し続けて、ついに1897年、ヘルツルのシオニスト会議がパレスチナにイスラエル国家建設を提案した。今日の、混迷するパレスチナ紛争の遠因はイギリスがイスラエル建国をユダヤ人に約束しながら、第一次大戦下でオスマン帝国にアラブ人が反抗することを条件に、中近東に領土を与えると約束した二枚舌が原因になっている。ユダヤ人は建国をめざしてパレスチナに移住してきたが、パレスチナ人の攻撃を受けた。イギリスはこの問題を国連に委託し、329