ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回優秀賞連の関与を求める声は少なく、アメリカの積極的な外交活動が要請されているのが現実である。国連には、1967年にエジプトのナセル大統領がシナイの国連緊急軍(UNEF1)駐留の前堤となっていた同意を撤回したため中東戦争を招いた苦い経験がある。また、75年にはシオニズムを人種主義とする反イスラエル決議を採択した。この2つの事件で国連はイスラエルの信頼を失った。アラブ諸国もパレスチナ側もアメリカのこうした立場を不承不承ながら認め、和平交渉においてアメリカがイスラエルを説得するなり、圧力を加えるかして譲歩を引き出す役割を期待しているxxi」。また、藤原帰一教授は「主要な決定の場が国連の外、たとえば先進国の構成する首脳会議や蔵相会議などに移ってしまったxxii」と述べる。なるほど、1999年のケルン・サミットは、コソヴォの問題解決、そしてロシアとの調整に大きな役割を果たしたxxiii。そして、藤原教授はこうも言う。「冷戦後の地域紛争への関与は、ワシントンの承認なしには動かない仕組みができあがったxxiv」。つまり、パレスチナ問題において国連が政治的に主導的役割をはたすことはイスラエルからもパレスチナからもそれほど期待されていないし、現段階では構造的にも難しいということになりそうである。では、国連にはなにができるか。次の節では、やや一般化した形で議論を進めたい。5.国連の役割(1)国連のソフト・パワーハーバード大学の国際政治学者ジョセブ・S・ナイ教授はこう言う。「軍事力と経済力はいずれも、他国に政策を変えるように促すために使えるハード・パワーである。ハード・パワーは誘導と脅し、つまり飴と鞭の両方に基づいている。」一方で、「自国が望むものを他国も望むようにする力を、わたしはソフト・パワーと呼んでいる。無理やり従わせるのでなく、味方にする力がソフト・パワーである。」「ソフト・パワーは影響力の源泉のひとつであるが、影響力ではない。影響力の源泉にはこれ以外に威療や報酬もある。また、ソxxi丸山直起「アメリカ・イスラエル同盟とパレスチナ問題」『国際問題』No.512(2002/11)xxii藤原帰一『デモクラシーの帝国』(岩波新書、2002)177頁xxiii 山本吉宣「安全保障-グローバル・ガヴァナンスの境界領域」『グローバル・ガヴァナンス-政府なき秩序の模索』(東京大学出版会、2001)226頁xxiv同脚注xxii 178頁321