ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

ページ
315/1096

このページは 佐藤栄作 受賞論文集 の電子ブックに掲載されている315ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回優秀賞ラエルの軍隊および入植者に殺されたパレスチナ入は2258人i。一方、イスラエルの自爆テロなどでインティファーダ以来殺害されたイスラエル人は800人以上に及びii、国連中東特別全権代表は今月の14日にガザにおける自爆テロを非難したiii。そのような暴力の応酬を絶つためにイスラエルが出した解決策が、西岸地区に建設中の分離壁ivである。しかし、それはさらなる暴力をうむ可能性を含んでおり、当然、問題の根本的な解決にはならない。2節では、その分離壁という切り口で、現在のパレスチナ問題を見る。3節では、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の活動について触れ、4節では国連のパレスチナ問題に対する政治的プレゼンスの低さについて述べる。5節では、国連の役割を多少、一般化した形で考え、6節の結論では本稿をまとめた上で、パレスチナ問題に対する国連の役割、特に政治的役割を考える。2.パレスチナの現状-特に分離壁についてパレスチナ問題は入植地問題、難民帰還、聖地帰属問題など多くの問題抱える。ここでは、パレスチナの現状を、分離壁を観察することによって考えたい。壁に対する各アクターの主張、対応を見ることが、パレスチナ問題を捉える上で有益な視点を与えてくれると思うからだ。(1)分離壁分離壁とは、イスラエル軍が、ヨルダン川西岸地区のパレスチナ人人口が多い土地を取り囲むように建設している障壁のことである。2000年11月、バラク前首相が分離壁の最初の建設事業を承認し、2002年6月に土地の没収と樹木の伐採を含めた壁の建設がジェニンの西部で始まった。イスラエルは、2005年までに650kmの壁(地図1のAからE)が完成すると公表している。カルキリヤ(Qalqilya)、トゥルカレム(Tulkarm)の一部、及び東エルサレムにあるコンクリートの壁は、高さが8メートル-ベルリンの壁の二倍の高さ-であり、武器をⅰhttp://www.pchrgaza.org/Intifada/Killings_stat.htm(Palestinian Centre for Human Rightsのホームページ,2004/01/31)ⅱ「分離壁で遠のくパレスチナ和平」滝沢和秀『世界週報』(2003/11/11)ⅲhttp://www.un.org/apps/news/story.asp?NewsID=9438&Cr=middle&CrI=east(国連広報センターのホームページ,2004/01/31)ⅳ「分離壁」との呼び名は朝日新聞に従った。イスラエルはこれを‘security fence’と呼び、また、国連決議A/ES-10/L.16では、‘a wall in the Occupied Palestinian Territory’と呼んでいる。313