ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第20回優秀賞民族の攻防と国連-パレスチナ問題を通して考える国連の活動と役割-荒木直哉要約現在、世界の多くの国は国内に民族問題を抱える。そして、時にそれは民族紛争となって国際社会に姿を現す。国連は存続を賭けた民族の攻防ともいうべき民族紛争に対しどのように対応してきただろうか。冷戦後、ソマリア、ボスニア、東チモールなど多くの民族紛争の事例に関し、国連は武力介入を容認する安保理決議を出し、紛争の解決に対策を講じ、成果を上げてきた。しかし、それらの事例はすべて大国の利益とは比較的無関係の地域において起こった紛争であった。上に挙げた事例と同等の暴力が繰り広げられているのに関わらず、チェチェンのように大国、特に、拒否権を持つ常任理事国5大国の利益が絡む紛争を扱えば、安保理は機能不全に陥るであろう。そして、大国の利益が比較的絡まない地域での民族紛争では、コソヴォのように安保理の決議がなくとも大国が対策を講じる場合すら出てきた。すると、真に国連のカを必要としているのは大国の利益が絡む地域の民族紛争ではないか。そこでの紛争では、大国が公平に紛争当事者を扱うことが不可能となるからだ。そのような大国の利益が絡む地域の民族紛争の典型例が、パレスチナ問題である。とするならば、パレスチナ問題に対する国連の活動と役割を考えることは、大国の国益追及のため解決が進まない民族紛争を進展させる方法を思考する上で有意義なことであろう。昨年4月末に発表された米国主導の中東和平案「ロード・マップ」の発表により、パレスチナ問題に希望が見えたように思われた。しかし、その希望は現段階において再び絶望となっている。我々は、毎日、パレスチナ人による自爆テロとそれに対するイスラエルの309