ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

類してみる。パレスチナ型1947年11月、国連は土地分割案を決議したが、それ以降、紛争が激化するにもかかわらず、ほぼ放置してアメリカまかせの状態である。紛争は継続しているが、静観するという関わり方である。カンボジア型1991年10月パリ和平協定の後、国連はPKOを展開し、紛争終結を維持させ、さらに選挙実施までして新政権を発足させた。国連の平和創造活動のなかで最も成功した例のひとつである。しかし国連は、1992年、同様にソマリアにもPKOを派遣したが、失敗に終わっている。紛争停止から新政権発足まで全てに関わる方法である。湾岸戦争型1990年の湾岸戦争では、アメリカの決定に国連が引きずられる形で武力行使容認の決議をしている。国連は、中東の石油の確保というアメリカ合衆国の帝国主義的目的に、安保理事会決議によって国際正義のお墨付きを与えたという見解10まである。一国に圧されて武力行使を容認し、正当性をもたせる関わり方である。コソヴォ型1999年3月、NATOは旧ユーゴスラヴィアに対して軍事介入しているが、国連はこれに対して容認する決議はしなかった。安全保障理事会の拒否権が発動されたのではなかったが、武力行使容認の文言は最終的に削除されたからである11。周辺の同盟国の武力行使を容認しないが、それをしたからといって制裁もしないという、ほぼ黙認する関わり方である。総括すると、国連はときになんの解決も導けないことがあり、ときにすべてに関わり、ときに周辺諸国にまかせるような態度をとり、ときに大国に圧されて武力行使を正当化さ28210松井芳郎,p.16.11最上敏樹:人道的介入,岩波新書:p.112,岩波書店、東京、2001.