ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

民族の興亡と国連第20回最優秀賞小久保亜早子はじめにパレスチナとイスラエル問題を例にとれば、局地的な紛争は全世界を巻き込む危険性があるといえる。率直に言うと、この問題は中東のある地域の土地をめぐる単純な問題である。しかし、それはもはや、一地域の問題の枠を越え、パレスチナ人対ユダヤ人という民族の紛争となり、それにとどまらず、イスラム教対ユダヤ教の、さらに中東対欧米諸国の紛争の様相を呈してきた。全世界を巻き込む前に紛争を解決する方法はなかったのだろうか。国連にはそれが可能だったのではないか。概して国連に期待されていることは、現実的な紛争の解決である。どこかの国が国際法に違反したとして、それを非難するだけでは解決とはいえない。現実に紛争を処理することができなければ信頼は得られない。かつて、第一次世界大戦後に戦争の教訓を生かそうと発足した国際連盟は、紛争処理の能力がなく、「ユートピアニズム」にすぎなかったと失望されている。そしてその結果が第二次世界大戦勃発である。過去の国際連盟と同じ運命をたどらないようにするためにも、紛争処理解決は国連の存在意義に関わる。しかも現代では、国と国との紛争であったかつての戦争形態の替わりに、国内の民族間の紛争のような形態に変わってきている。国連はこの変化に対応できなければならない。他方、国連にはさまざまな期待、批判が向けられている。国連にアピールすれば戦争を停止させ平和を実現できるという過大な期待、湾岸戦争を正当化することで国連の理想は踏みにじられ、国連は無原則で無力な存在であると証明されたという批判、国連は国際政治の現実と関係なく存在し、各国政府に強制的に命令できる超国家的・世界政府的な機構275