ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

れている。とすれば、現在の国際社会における「最も善良そうな人物・最も疑わしくない人物」は国際連合をおいて他にない。従って、21世紀に国際連合が果たすべき新たな、そして最大の任務とは、国際連合が国際連合自身を警戒し監視することにあるという全く皮肉な結論に達せざるをえないのである。――馬鹿馬鹿しいと思われるであろう。突然何を言い出すのかと思われるであろう。第二次大戦から今日まで半世紀以上にわたって世界の平和の実現と維持の為に奮闘してきた国際連合に対し、よりによって警戒しろ監視しろとは何事かと叱られるであろう。しかし、それでも国際連合は厳しく警戒され監視されなければならないのである。しかも、現時点でそれが出来るのは国際連合しかいない。国際連合が自らの持つ(潜在的な)危険性を自覚するしかないのである。私は国際連合の存在を否定しているわけでは決してない。また否定出来るはずもない。いろいろ批判はあるが、国際連合が戦後平和の構築に大きく貢献してきたことは紛れもない事実である。何より、国際連合が今なお存続していること自体が平和なのである。むしろ常に批判されてきたことこそ重要である。批判される為にあったと言ってもいいくらいである。私達が最も恐れなければならないのは、国際連含が批判されなくなる時代の到来である。そもそも国際連合(the United Nations)は、どこから読んでも(結合された)諸国家・国家群である。どのような組織を持ち、どのような目的の下でどのような行動を取ろうとも、それが主権を有する国民国家の集団であることを疑う者はいない。すなわち、国際連合こそは20世紀という『国家の世紀』の申し子であって、国家主権の存在を否定するような世界連邦や世界政府への準備機関として作られたわけでは決してない。実際、国連が今日まで57年聞にわたり平和と安全の維持を目指してきた対象も、あくまで国民国家・主権国家の集合体としての国際社会(the community of nations)であった。それ故、国際連合は本来『国家の時代』を護るべき立場にある。国際連合=連合国であ264