ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回奨励賞にもかかわらず、「非政府」・「非営利」の二点に限れば、アルカイダとNGO・NPOを異質のものと考えなければいけない論理的な理由は何一つ見い出せない。そもそもボランティアという用語自体、18世紀においては大英帝国軍(特に植民地軍)への「志願兵」を意味していたことを私達は忘れてはならない。NGO・NPOとアルカイダは共に、『地球市民社会の時代』を理解する貴重な手がかりであると私は考えている。表と裏、光と闇、孝行息子と鬼っ子の違いこそあれ、同じ時代を母とし、一つ腹から同時期に産まれ出たことまで否定すべきではない。新しい時代は必ず、人類に新しい恵みと新しい災いをもたらす。同時多発テロとそれに対するアフガン攻撃が「新しい戦争」と呼ばれなければならないのは、新しい時代の新しいリスクを暗示するからである。それが21世紀という『地球市民社会の世紀』の冒頭にいきなり登場してきたのも、私には決して単なる偶然だとは思えないのである。321世紀の国際紛争20世紀は『国家の世紀』であったとされるが、その後ろ半分はむしろ国家にとって受難の時であった。国際連合を初めさまざまな国際機構や組織、数多くの国際会議とそこでの条約・協定・宣言・覚書・憲章・議定書等々が国家を縛りつけた。また世界中にいくつもの集団安全保障機構が生まれたが、それらも結果的には加盟国の交戦権への制約として機能した。人類は「国家」という名の猫の首に鈴を付けることに再度挑戦し、ようやく成功したのである。第二次世界大戦後の国際社会に対する見方はさまざまであるが、少なくとも第三次世界大戦が冷戦と代理戦争というレベルで辛うじて収まったことは評価すべきであろう。皮肉なことに、膨大な量の戦略核兵器を抱え込むことによって、大国同士の全面戦争・総力戦争はいかなる国益の衝突があってもペイしないことが了解された。すなわち、国益の衝突=国際紛争を解決する最終手段としての戦争は事実上封印されてしまったのである。問題はその後のシナリオである。国家が勝手に戦争出来なくなってしまえば、また国益259