ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

2国際連合の国際紛争解決システムa)紛争の平和的解決義務国連加盟国にはまず、紛争の平和的解決の義務が課せられている。憲章第2条3項は、「すべての加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」と規定している。この平和的解決の義務は、1970年の友好関係原則宣言や1982年のマニラ宣言においてすべての国家の義務であるとされ、1986年のニカラグア事件本案判決においては「慣習法としての地位」を有するとされた。以上のように、国家には紛争の平和的解決の義務が課せられているが、かかる国際紛争を解決する手段は様々である。憲章第33条は、「いかなる紛争でも継続が国際の平和及び安全の維持を危うくする虞のあるものについては、その当事者は、まず第一に、交渉、審査、仲介、調停、仲裁裁判、司法的解決、地域的機関又は地域的取極の利用その他当事者が選ぶ平和的手段による解決を求めなければならない。安全保障理事会は、必要と認めるときは、当事者に対して、その紛争を前記の手段によって解決するように要請する」と規定し、まずは当事者による紛争の平和的解決を求め、その選択を紛争当事者の手に委ねているのである。第33条に列挙される紛争解決手段との関連において国連の関与が重要になってくるのは、第三者としての仲介や審査の段階においてであろう。加えて、介入する主体が国家や個人という場合も例えば国連事務総長などの場合も考えられる3。また、国連大学の役割りを考慮した場含、第33条に列挙される手段に関する研究を通じた貢献が行えるものといえよう。b)国連の政治的機関による紛争の解決国家間紛争が激化し、安全保障理事会によって「国際の平和及び安全の維持」を危うくするものであると判断されたり、「平和に対する脅威」と見なされたりすることによって2363 事務総長の周旋活動については、林司宣「国連事務総長の周旋活動(1)(2)」、『国際法外交雑誌』90巻1号、90巻3号(1991年)。また、ローマ法王が紛争の平和的解決に活躍したビーグル海峡問題がある。斎藤恵彦「ビーグル海峡問題(アルゼンチン・チリ)の解決とローマ教皇庁の居中調停(mediacion)―ある地域紛争解決のための枠組―」『海洋時報67号』(一)、68号(二)(1993年)。