ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

章は、「国際の平和及び安全の維持」に第一義的責任を負う安全保障理事会が決定した軍事的措置(第41条)と自衛のための武力行使(第51条)の場合において、一定の制約の下で武力の行使を容認しているからである。上述のような手法によって国連は「国際の平和及び安全の維持」のために国際紛争を解決してきたが、冷戦の終焉や2001年9月11日の同時多発テロ事件など、国際社会を取り巻く環境は大きく変化している。国連や実務家の間においてはこうした時代背景の変化に応じた国連の在り方などが議論されてきているが、未だ暗中模索の状態といえるであろう。そこで本稿においては、国際紛争の解決に果たす国際連合及び国際連合大学の役割りについて、現代という時代背景を考慮しつつ考えてみたいと思う。Ⅰ国際紛争の解決における国際連合の役割り1ポスト冷戦時代における国際紛争の特徴と国際社会の構造1989年12月のマルタ島における米ソ両首脳による冷戦終結宣言は、それまでの米ソ二大国のイデオロギー競争に終止符を打った。しかし、それは同時に冷戦の構造によって押さえつけられていた各国の民族集団のアイデンティティーへの要求を増加させた。こうした冷戦後の国際社会における国際紛争の特徴としては民族紛争、いわゆる内戦が増加したことが一つの特徴である1。内戦は紛争の性質上、平和的解決のための交渉すべき当事者の特定が困難であることや、国家それ自体が破綻してしまった場合があり2、その解決を困難としている場合が多いのが一般的傾向である。国連の場においては、米ソによる拒否権の応酬が消えたこともあり、また内戦の増加による平和維持活動の要請も高まったため、冷戦後の国際社会において国連が果たす役割りが期待されるようになった。周知のように、湾岸戦争、ソマリア内戦、旧ユーゴ紛争などの問題において多くの問題点を指摘されているところではあるが、国連が紛争解決の主要な行為主体として疑われることはなかった。2341 本論文においては、「内戦」や「民族紛争」がしばしば国際関心事項として国連によって取り扱われることがあるため(紛争の国際化)、これらを「国際紛争」に含めることを断っておく。2例えば、ソマリア内戦の際に使用された「破綻国家(failed state)」という言葉を想起されたい。