ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

では少なくとも統率者の死亡は敗北とみなされるため、生存する、あるいは生存させようと当該国が最大限に守る人間は、火種の決定者であり国民ではない。紛争の終結提示も、生き残った統率者のなす国体維持の能不能についての判断による。国民の生が紛争によって奪われ、紛争の責任者が生存するというのは不条理極まりない。かといって、統率者の責任追及すなわち、統率者を裁き追放あるいは殺すなどの措置をとれば、それはそれでまた紛争(テロ)につながる恐れを孕む。結局、自国を守り、強大にしたいという思いは、可能性が少しでも見えてくればいずこも同じなのである。それに国連という組織が加担してはならない。国連は世界という枠組みの中で国家が存在すべき姿勢を、声を大にして主張しなければならない。即ち、気に入らない「他国」も苦々しくても何でも認めなければならないと。双方互いに犯してはならないと。自国を自国のポリシーで守るのは自国内の仕事であると。他国からの思想等移入を云々して他国に責任転嫁してはならないと。2-2-3、仮定的国際紛争と、国連の体制の問題2:また、紛争が常任理事国以外の2国、他国間で起こった時、国連はそれにどう対処すべきなのだろうか。これもまた同じである。5ヶ国の思惑、思想に近い国を援護射撃する、という姿勢を廃止しなければならない。紛争を仕掛けた側に非がある、として調停をする以外の策を講じないことである。しかし、5ヶ国が国連の中枢に鎮座している姿でこれは可能だろうか。ある国家間に紛争が起こったとしよう。そのうちの一方が5ヶ国のどこかと非常に緊密な関係を、条約あるいは永年の慣習として持っているとする。その際、5ヶ国のどこかが一方を援護する紛争介在に対して国連は警笛を鳴らせるだろうか。否、後押しをすることになるであろう。1991年の米国のイラク攻撃は正に米国とクウェートのこの関係から始まった。更に、当然ながら5ヶ国のどこか1ヶ国が攻撃されれば、それに対抗する紛争以外に、国連許諾を226