ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第19回優秀賞している風を装わなければ生き抜けない雰囲気である。当然ながら、当の米国が自国の「勝利」と「善」「是」を自負し、強烈に信じている。国際紛争を解決するには、根幹として他国を許容する理念が必要である。自国を守ることを前提としても、それは十分に可能である。さらに、武力が人を殺す力、殺人兵器であることを自覚することである。国連が国際紛争を解決する機関たらんとするのであれば、国連が5ヶ国の常任理事国を中心に据えている体制は非常に問題である。世界に冠たる国が存在するのは歴史の常ではあるが、世界の平和を目的とする場合に、5ヶ国が世界の秩序であることを出発点にするのは無理がある。国連が5ヶ国の世界への発言力を維持、誇示するための機関に成り下がる可能性が大きく、その点が、殺傷行為を繰り返す国や組織(テロ国家、テロ組織)による国連軽視の反駁材料となってしまう。また、国連に注ぎ込む分担額があまりに偏りすぎている上、それが国連への影響力とかけ離れている点は問題である。通常予算の分担率だけをみても、米国の22、目本の19.5%は断トツに多く、独逸9.7、仏国6.47、英国5.54、伊国5.06%と続き、中国1.53、ロシア1.2%とは常任の名が廃る数字である。中国もロシアも国家国民の数字上の資産(例えば一人当たりのGDPなど)の低さは確かにけた違いだが、両国とも近年大変な経済成長をみせている現実を鑑みれば「各国の支払能力、国民所得および人口に基づく」拠出割合が実行されているとは思えない。また、日本の突出した拠出額を人的貢献の代替とみなす論は、日本が現行憲法の元で10余年前からPKO参加など軍事的拠出を実施している点から最早当たらない。尚、国連の各主要ポストを日本人が得ていることは承知だが、重大決議に対して発言権を獲得しているわけではないし、国連が日本の申し立てを重く受け止め行動した重要事案も見当たらない。例えば、現在、誰の目にも逼迫が明白な極東情勢にあっても、国連が発する声明の中に積極的な北朝鮮制裁の内容は見当たらない。人道的援助継続の必要性がこれまでと変わるところなく謳われ221