ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

な大原則である。グローバルな社会に国境は必要ない、さらに進んでアナーキズム(無政府主義)、という思想などは古くから存在するが、それらを議論に載せるのは現在はまだナンセンスである。当面は、地球上の世界は多数の国家の集合体である、と定義できよう。この「多数の国家」を各々「独立国家」と表記したいところだが、現実は国連の中枢に鎮座する一強大国家に所属もしくは与する国家と、独立あるいは反目する国家、である。この枠組みをはずすことはそれ自体が国際紛争の新たな火種につながりそうで難儀な話であるが、本来、国家には各々主権があることをどの国も自覚する必要がある。各国に主権が存在するということは、各国にそれぞれの政治体制や経済体制が存在して何ら問題はないということである。同時に、各国家自体が世界を形成する一部でしかないことを認めなければならない。ゆえに、各国の主権は他国のそれを侵害しない限りにおいて保証されるのである。国家を人権に置き換えてみれば誰にでも分かる話である。国家は元来人間の集まりなのだからこの置き換えは妥当であろう。自国と異なる体制も、気に入らなくとも認めなければならない。世界制覇の歴史は自国を強大にして他国をのっとることであった。近年では、それは他国を自国に組み入れること、たとえ侵略や植民地化という形をとらないとしても他国を自国に従わせること、であった。冷戦時の米・ソによる世界二分断はその最たる例である。ソ連が瓦解しWP体制が崩れたことで、米国は冷戦に勝利した。しかし、この勝利は不戦勝にも見えるし、勝利要因は究極、経済的理由だけだったようにも見える。いや、米国の計算づくのプロパガンダによる実(じつ)の伴った勝利なのかもしれない。ともかく現在はまだ検証するには日が浅く、本当のところはもっと後にならなければわからないはずだ。にもかかわらず、世界をまたに掛けるプレスを中心に、各国の判断はせっかちである。彼らは今、米国流の政治、経済体制しか受け入れられなくなっている。米国流の政治体制、経済体制こそが唯一絶対の「善」であり「是」に見えているようだ。少なくともそうみな220