ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第29回優秀賞4「平和に対する脅威」の定義の確定「平和に対する脅威」が恣意的に認定される危険がある点はよく指摘されるが、これを防ぐための手段は恣意的決定を許さないこと、即ち決定主体をより中立的・客観的なものにするか、決定主体は変えられなくとも定義を明確にするかである。前者については1に述べた通りである。後者についてだが、国連憲章自体が多くの解釈を許すような文章であることは責めることが出来ない。多数国間の「最大公約数」が、国連憲章であるからだ。しかし後から附則を設けることで、それを補う努力を諦めるのは間違いであろう。現に恣意的な解釈を許している今、安易な「現実」の受け入れは許されない。「平和に対する脅威」に含まれる事象を列挙する形で、かなり明確に定義が出来るはずである、もっともそれを確定する過程のどこかで拒否権が行使されれば、元も子もなくなるのだが。一方未だ理想に過ぎない長期的な展望を述べれば、5より中立的な安保理の誕生長期的に見れば現在の安全保障理事会の仕組みは改革を避けられまい。「五大国」の相対的な地位の低下はいずれ誤魔化しの効かないものになるだろう。そうなった際、より中立的な新しい安全保障理事会が生まれればそれに服することが出来よう。具体的には、常任理事国の撤廃が最もリーズナブルである。6いわゆる国連軍の設立5が可能になれば、憲章43条を実行に移すことは既に難しくないはずである。3で述べたような限定的な待機人員のみならず、PKOを真に担えるだけの人材と装備を揃えることが出来るだろう。その際、地域機構や多国籍軍との役割分担が課題になるだろうが、それはこれまでの問題に比べれば大きな問題にはならないだろう。逆に、国連が既に変わった過去の「現実」を受け入れ続けるのならば、現在の国連の機1051