ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第29回優秀賞前者は国連が行動する主体として機能することを目指す場合、後者はそれを諦めた場合に効率性の面から国連を正統性を提供する単なる「場」としてしまう場合である。各項目を見ていくと、1安全保障理事会からの独立性の確保これまで述べてきた通り、安保理がPKOの派遣を決定する限り、常任理事国と拒否権という制度があればその政治的意思の反映はまず避けられない。そのためにこれまで国際社会が辛酸を舐めてきた例はいくつもある。しかしこの状態は、論理的な正当性から見れば明らかにおかしい。一部の国、それも世界の上位五大国とも必ずしも言えないような国々の政治的な意思に全ての国が最終的に左右されることはあまりに理不尽である。世界のパワー分布の「現実」として目を背けられてきたこの理不尽を短期的に変えることは出来ないが、ある程度独立性を確保することは出来るのではないか。具体的に言えば、まずPKOの任務の内容、権限の付与などに限って安保理から事務総長に権限を移行することが挙げられる。あくまで「平和に対する脅威」を認定するのは安保理でも、それに対するアプローチを決定するのは事務総長である方が、実際の状況に対応しやすい。またルワンダのような一方的な虐殺や、化学兵器生物兵器の使用などの絶対悪と呼べる事件が起きている場合には、安保理での議論を待たずとも事務総長の権限で必要な措置が取れるようにすべきである。こうした場合には特に一刻を争うわけであるから、それをPKOが行うにせよ、多国籍軍が行うにせよ、常任理事国の関心が薄いからと言って見過ごされることのないような仕組みが必要であると考えられるからだ。2専門的調査機関の設立情報収集・分析能力が欠けたままにPKOが行われてきたことは既に述べた。しかし効果的な平和維持・平和構築を行う上で、こうした能力は必要不可欠である。そこで、ブラヒミ報告でも指摘されていることだが、潜在的紛争の把握、紛争地帯の状況の常時確認、1049