ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

倒錯」であった。その高尚な「建前」を実現できないために、「本音」で最低限対処する、あるいは「本音」では実行したいことが叶わないために、「建前」として間に合わせを作り、それがさも「本音」であるかのように振る舞う、そうした構図に国連はあふれているように思われるのだ。憲章で国連軍を想定しておきながらそれができないからPKOで間に合わせる、自前の軍隊がないから特定の国に武力行使を授権する、そしてそれらがさも当初から意図してきたことであるかのようにそれを前提とした考え方をするようになる。冷たい言い方をすれば、認知的不協和を解消しようとしているかのように見える。国連は冷戦時に作り上げた、その当時の現実に適応したその在り方を、冷戦後にも度々修正を加えながらやりくりしてきた。しかしそれによって生まれた整った制度を重視するがあまりそれが依って立つ基盤の部分、すなわちかつて仕方ないと諦めた「現実」を変更できる可能性を顧みていないように思われる。具体的に言えば、短期的には以下の様な変更が可能であると考える。1安全保障理事会からの独立性の確保2専門的調査機関の設立3即時配備可能な部隊の確保4「平和に対する脅威」の定義の確定長期的には、5より中立的な安保理の誕生6いわゆる国連軍の設立が可能になるかもしれない。一方でこれらが達成できない場合、全く逆のオプション、すなわち「国連の非国連化」が考えられる。1?武力行使の多国籍軍や地域機構への完全なアウトソーシング2?平和構築のNGOや市民団体への完全なアウトソーシング1048