ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

第29回優秀賞20位が最高である26。途上国がこうした国際平和の枠組みに積極的に参加することそれ自体は歓迎すべきだが、実際はそう単純ではない。例えば、大庭(2009)によれば、国連ルワンダ支援団に派遣されたバングラデシュの部隊は「基本的な食料すら持参せず(中略)練度も士気も非常に低いという状態であり、訓練の一環としてPKOを利用しているとの印象」を指揮官のダレールに与えたという27。全ての途上国が先進国の部隊よりも劣っているという議論は事実ではないであろう暴論だが、このように実戦経験を積むという利己的な意識でPKOに臨む例があればそれだけ部隊の質も下がり、執行に差し障ることになる。問題は、事務総長側には派遣国を選ぶ自由が実質的にないということである。事前にその部隊の練度や士気を見極めることは出来ないし、人員を確保できるかもわからない状況で特定の国からの派遣を断ることは難しい28。*指揮系統・コミュニケーションの問題…PKOにおいては各ミッションに軍司令官・警察長官等が任命されるが、基本的にアドホックな性格からその指揮系統を明確にすることが難しい。特に、本国からの指示との「二重の忠誠」問題は深刻である。先述のルワンダの例において、バングラデシュ部隊は副司令官からの、現地人避難民の受け入れや保護のための出動を、本国からのルワンダ人を救うために部隊を危険にさらすなという命令のために拒否した29。このように極端な例ではなくとも、部隊の展開において、日頃命令を受けていない、多くの場合は外国人である上官と意思疎通することは極めて難しいに違いない。特に、言語的に問題がある場合は深刻である。3.解決策の提案3.1総論国連の安全保障へのアプローチの歴史を概観した時に浮かんだ言葉は、「本音と建前の26 United Nations Peacekeeping“Troop and police contributors archive(1990 - 2012)”http://www.un.org/en/peacekeeping/resources/statistics/contributors_archive.shtml27大庭(2009)65頁28滝口(1997)45-46頁29大庭(2009)65-66頁1047