ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

在を決定し、並びに、国際の平和及び安全を維持し又は回復するために、勧告をし、又は第四十一条及び四十二条に従っていかなる措置をとるかを決定する」権限を国連安全保障理事会が有している限り、何が「平和に対する脅威」なのかを明確に規定しなければ恣意的な運用は避けようがない。極端な例で言えば、現行の制度でアメリカの行動が「平和に対する脅威」として認定されることは「平和のための結集決議」を考慮してもまずあり得ないであろう。先進国の多くは互いを信用しているため無意識にそうした状況を当然と考えがちだが、先進国と途上国の間にはそのような信頼関係が無い場合が多く、途上国側は不公平を感じることになる。繰り返されてきた議論になるが、これが安保理改革とも繋がる議論であることがわかるだろう。国連憲章は諸国の政治的立場の「最大公約数」のようなものであるから、文言が曖昧になるのはある意味当然である。しかしながら、「平和に対する脅威」が明確になるか、その認定が特定の国に特権を与えない方法によって行われない限り、「総意」を騙った国益追求がまかり通るのは自明である。2.3PKOの根拠規定の不在、性格の不確定現在では国連の平和実現へのアプローチとして主要な位置を占めているPKOだが、周知のようにこれはそもそも憲章で予定されていたものではない。憲章43条に定める特別協定の締結が事実上不可能になった冷戦期、国連軍の設立が夢物語と化す中で安保理の機能麻痺を補完するものとしてPKOが案出されたのである23。厳密に言えば、そうしてPKOが案出されたのではなく、妥協の産物として生まれた国連の行動が実行を重ねる内に体系化され、PKOと呼ばれるようになったと言うべきだろうか。そうであるから必然的に、PKOの憲章上の根拠は薄い。明文規定は無論存在せず、そのためにPKOをどのような性格のものにするかという方針が時期によって大きく変化してきたのは、1.1で述べた通りである。近年方向性がかなりの程度固まってきたのは確からしいが、多国籍軍や地域機構との役割分担、NGOや市民団体との協働などの面にお104423杉山(1999)95頁