ブックタイトル佐藤栄作 受賞論文集

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概要

佐藤栄作 受賞論文集

結論を先取りすれば、本稿が考える国連の人道危機政策の成果の原因とは、人道危機の発生・深刻化・再発をとめられなかった先例の教訓を活かし、新たな人道危機政策を次々と生み出してきたことにある。一方、課題の原因は、「部分最適のパラドックス」という原理的問題に求められる。これは、各政策の効果(部分最適)を積み重ねても人道状況改善という最終的な結果(全体最適)につながらないという問題である。成果の原因は同時に課題の原因でもあったのである。もっとも、部分最適の積み重なりが必ずしも全体最適につながらないことは、他分野でこれまでにも指摘されてきた。ただし、各政策の背景にある相互に異なる個別的利益・価値がそれぞれ尊重されるがゆえに生じるとされてきた従来の議論4に加えて、本稿では各政策の背景に人道状況改善という共通の利益・価値がある場合でも生じ得ることを示し、その対策を考える。10224 国内政治・経済や経営の文脈で用いられることが多い。地方自治に関する「都市官僚制の論理」と「納税者の論理」の相克の指摘として、砂原(2012)p.224を参照。経済や経営面では、財務省や経営者など資金全体の流れに着目する立場から、各省庁・各部署の個別的利益の過度の尊重が戒められることが多い。