ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回佳作為と聞く。解体したソ連国の各独立国は独立を謳歌する暇もなく経済的混乱に喘いでいる。各民族の独立は細分化を招き、細分化すればする程国力の弱体を来たし、現在の世界のシステムの中では、生きていく事さえ困難となり、再び何らかの統合を渇望する事態に立ち至ると想像される。世界は急速に狭まりつつある。交通や通信の発達は世界の何処かの出来事が忽ち全世界に知れ渡り、或いは世界に影響を与える。特に経済は全世界が微妙に影響し合って成立しており、政治のみが民族や国境の塀を高くすることはもはや不可能の時代になっている。斬く考えてくると、今人類にとって最も大切なものは、そして人類が最も切望しているものは、世界を調和する公正にして強大な機能である。この機能は本来国連が保有している筈である。しかし乍ら国連の過去の歴史は挫折の歴史であって、今後も多くを望む事は無理であらうと多くの識者が指摘する。何故か。主因は国連の機能が弱体であった。又国連自体の運営が民主化されていなかった事にあらう。機能が弱体であり又民主化されていない第一の原因はイデオロギーの異なる二つの超大国が存在した事にあるが、これは既に崩壊して原因とならない。第二の原因は安保理に常任理事国があって、此等の国の権限が突出し、又拒否権を有してそれをかなり政治的に使用して来た。この機能は今も存在し、縮小する気配さえもない様であるが、既に責任権限がかなりチグハグであるし、この儘では国連への信頼や期待は次第に低下する事とならう。第三の原因は、総会の一票の格差が大き過ぎる事である。日本でも国会議員選出に関する一票の格差が問題になっているが、国連の現状は、人数当りにすると数百倍、数千倍の格差となっており、国連決議に対する白けムードの原因になっている。この様な事から国連はその崇高な理念に拘らず、実行力が伴わず、世界の信頼を克ち取る事が出来なかった。而も此等の改善は加盟各国の利害に絡む事であり、だから国連には今後も多くを期待出来ないとの論理もあるが、だからと言って、他の方法による世界の共存の道はもっと困難と思われるし、冷戦の終結した今こそ、過去を反省し、国連の強化によって世界の安全と繁栄をはかる方策を再構築すべき時である。93