ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回佳作在独立国家となっている場合は民族自決による分離独立を一切否定するということも安易な現状維持であり支持できない。民族間紛争が一国内にとどまる限り、それは国内問題ともいえるが、その対立は人権侵害や武力行使に至る場合が多く、そのような場合は、国際的関心事項として国連の第三者的立場からの介入が望まれるといえよう。2人類の平和的共存の為の基本的枠組みづくりまず、人類の平和的共存の為の基本的枠組みの設定を困難にする国際社会の問題について述べることとしたい。冷戦が終焉した現在、国際社会における世界的規模の対立は先進国対発展途上国であることは既に述べた。この南北問題は主として経済的問題に関する基本的立場の相違となってあらわれるが、それにとどまらずあらゆる問題について見解の相違をもたらしているのが実情である。途上国側の主張は、1974年に国連資源総会で採択された新国際経済秩序樹立宣言(UNEO)や国家の経済的権利義務憲章に集約的に示されているが、国際経済秩序における実質的平等の確立を含むこれらの主張に対して、先進国は警戒的である。途上国側は、国連における圧倒的多数という立場を利用して、自らの主張を実現するために国連総会を利用する傾向があり、それがしばしば強引な形をとるために先進国の国連離れという新たな問題も引き起こしている。例えば、深海底資源の開発と利用に関する見解の相違は、結局、途上国側の主張に押し切られた形で国連海洋法条約に規定されたが、それがため米英独等有力先進国は海洋法条約に参加しない結果を招いている。途上国の国連に寄せる過剰な期待が、総会における多数派の力による実現という形をとって現れる場合、先進国の国連離れを引き起こし、結局、国連が国際社会に果たす機能の低下を惹起する。国際社会の基本的枠組み設定にあたっては、加盟各国がこの事実を重視すべきである。討論と説得を尽くし、少数意見を考慮した上での基本的枠組みこそ意義あるものである。加盟国間の議論に加え、PKOの場合と同様ここでも利害調整者として国連事務総長に積極的な役割が期待されよう(98条参照)。現在、基本的枠組み設定が急務となっている問題には、環境破壊と東西和解後の軍縮が挙げられるが、最近の成果のひとつに兵器取引の規制がある。兵器の自由な売買は、国際社会の平和と安全の脅威につ87