ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
871/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている871ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回佳作もなった。この意味でUNTACは現在のところ暫定統治の成功例と考えられている。同様の暫定統治は1999年に入って国連コソボ暫定行政ミッション(UNMIK)、更には東ティモール暫定統治機構(UNTAET)として活動を開始したが、コソボ、東ティモールをめぐる情勢はまだ流動的であり、これらの組織の活動のバランスシートが出るまでは今しばらく時間がかかると思われる。2.委任・信託統治の「遺産」ところで、一見新しく見えるこれらの暫定統治にはきわめて類似した先例があった。国際連盟の時代(1920-1946)に行われた委任統治mandate systemと国際連合の時代に入ってからの信託統治trusteeship systemである。これらの制度は非自治地域(連盟当時にはそのような用語はなかったが)の行政を国際機構が特定の先進国に委託するというものであった。委任統治制度においては「近代世界ノ激甚ナル生存競争状懇ノ下未タ自立シ得サル人民」を先進大国が後見することが「文明ノ神聖ナル使命」とされ(連盟規約第22条)、信託統治制度においては国際間の安全の促進と並んで信託地域の住民の自立化(国連憲章第76条)が目的として掲げられた。ニュアンスや強調点の違いはあるが、両者に共通なものは委任・信託統治は暫定的なものであり、当該地域はいずれ自立した主権国家となり国際社会の構成員となるとの思想である。第1次世界大戦後の戦勝国による敗戦国ドイツ・トルコの海外領土分割支配を隠蔽する目的も多分にあった委任統治に比較して、「民族自決」「主権尊重」「非植民地化」を原理とする国連の信託統治下においてこの思想はより推進され、1960年代までに委任・信託統治下にあった地域の大部分は独立した。その後、委任統治から信託統治への切り替えを拒否して国連との間に摩擦を生じさせた南アフリカの南西アフリカ(旧ドイツ領)統治は1989年にナミビアの独立で終わり、唾一残っていた太平洋のパラオ(旧日本委任統治領)の米国による戦略信託統治も1994年に終了、これらを統括してきた国連の信託統治理事会はその活動を閉じた。委任・信託統治下に置かれた地城の行政水準は国際機関の不断の監視監督のもとに置か869