ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

とえばLuttwak論文を批判するEconomist(July 31 st1999)巻頭論文‘Other people’swars’〕もある。エコノミスト論文は前者の例として台湾海峡危機、インド・パキスタン間のカシミール紛争、南北朝鮮間題を、後者の例として旧ユーゴスラビアやルワンダにおける民族浄化やジェノサイドを挙げている。一見対立する両者の主張のどちらも間違ってはいないところに近年の民族・地域紛争の複雑な性格が表れている。これらの難問への処方箋を考えるにあたって筆者は既成の概念や価値観をいったん放擲することから始める。国内外を問わず冷戦期のイデオロギーや固定観念が自由で柔軟な思考を妨げてきた事を想起すべきであるからである。具体的には、最近平和維持活動の延長線上で行われている国連の暫定統治temporary administrationを手がかりに、これが持つ可能性と限界について考察していきたい。1.暫定統治の誕生最近の地域紛争解決における国連の平和維持活動に関して目につく語に「暫定統治」がある。これは国連やその他の地域機構が破綻国家や紛争地域の行政を一時的に代行することをさす。従来の国連の平和維持活動の大部分が、紛争鎮静後に軽装備の部隊が紛争当事国間の兵力引き離しや停戦監視に従事するにとどまっていたことからみれば、暫定統治は大きな変化といわねばなるまい。単なる「平和の維持」Peace-keepingからいわゆる「平和の創出」「平和の構築」Peace-making, Peace-buildingへの重点の移動ともいえる。ところで、「暫定」の名称が示すようにこれは長期的ましてや永続的なものではなく、当該地域の社会秩序が回復し、紛争当事集団間に和解が成立すれば終了する性質のものである。1990年代に入っての最初の事例は国連カンボジア暫定機構(UNTAC派遣期間1992・3 - 93・9)である。UNTACは内戦終了後のカンボジアで統一政府が形成されるまでの間、停戦監視、地雷撤去、選挙実施そしてこれらを円滑に行うための行政を担当し、任務を終了して解散した。日本人の明石康氏が最高責任者をつとめたことでわが国でも大きな注目を集め、また日本がこの種の平和維持活動に積極的に参加を開始する契機と868