ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回佳作「暫定統治から国際行政へ:冷戦後の民族・地域紛争への一処方箋」等松春夫はじめに東西冷戦が終結して早くも10年がたったが、国際社会はそれまで予想できなかった難問に直面している。冷戦下で凍結されていたさまざまな地域・民族紛争が噴出してきたのである。これらの紛争の大半は伝統的な主権国家間の戦争ではなく、エスニシティ、地域的・歴史的または宗教的対立に原因を持つ同一国家内の内戦の形をとり、その結果アフリカを中心にバルカン半島、中央アジア、東南アジアなどにいくつもの破綻国家failed statesが生じてしまった。破綻国家の内部では悲惨な流血と貧困、そしてこれらをのがれようとする住民の難民化が起こっている。ところで、これらの破綻国家に対して冷戦の重圧から解放された国際連合は次々に平和維持活動を開始し、その件数は1991年以降数え方にもよるが20件以上に及ぶ。国連の平和維持活動の急激な活発化はガリ事務総長(当時)が唱えた「平和への課題」An Agenda for Peace(1992)によるところが大きい。しかしながら、これら国連およびその支待を受けた地域機構の紛争への介入(たとえば最近ではNATOによるコソボ紛争への武力介入)の有効性に対する深刻な疑問も提起されるようになった(たとえばForeign Affairs 1999年7・8月号所蔵のEdward N. Luttwakの論文‘Give War a Chance’)。これらの批判は、要約すれば国連や地域機関による国際的人道介入が紛争の根本的解決をもたらさず、場合によっては本来の意図とは逆に紛争を複雑化・長期化させるおそれがあること、および「人道的」の美名のもとに安易な介入が濫発されることによる国連財政の破綻の危険に向けられている。一方、国際社会の介入がないまま放置された地域紛争がやがては一定地域にとどまらない大規模な国際的危機を招来しかねず、また短期的・物質的利害を度外視しても行わねばならない介入があるとの主張〔た867