ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回佳作「暫定統治から国際行政へ:冷戦後の民族・地域紛争への一処方箋」等松春夫要約冷戦終結後のこの十年間、急激に増加した地域・民族紛争への対応に国連を含めた国際社会は苦慮している。議論の一方の極には国連または地域機構が紛争への人道的介入を積極的に行うべきであるとの主張があり、また他方の極には安易な介入は却って紛争を長期化・恒常化させるので控えるべきであるとの批判がある(たとえばガリvs.ルトワック)。このような状況の中で90年代に入って顕在化してきたのは、国連の平和維持活動が紛争当事者間に介在する事で紛争を凍結させるという従来の方式から一歩進んで紛争終結後の地域の治安回復と行政にも関与するようになってきたことである。カンボジア(1992)、コソボ(1999)、そして最近の東ティモール(1999)における国連の暫定統治はその典型であり、また名称は異なるがキプロス、ゴラン高原など国連平和維持軍の駐留が長期化した地域の実態も部分的には国連による行政に類似している。国際機関が紛争地域の行政に携わるという一見目新しい現象は実は過去に既に行われていた。国際連盟の委任統治そしてそれを継承した国際連合の信託統治である。委任・信託統治下にあった地域は(そして直轄植民地支配下にあった地域も)1960年代までにその大部分が独立を果たし、最後まで残っていたパラオの信託統治も1994年に終了して信託統治理事会は約半世紀にわたった活動を停止した。この背景には、すべてのネーションが民族自決の原則に基づいて主権国民国家を形成して国際社会を構成することが世界の安定につながるとの思想があった。非植民地化の流れ(たとえば1960年の国連総会における植民地独立付与宣言)がこれに拍車をかけた。しかしながら、かって委任・865