ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回優秀賞戦に効果的に対応できず、信頼性そのものが問われるケースが増えている。国連は平和構築の問題にはうまく対処できず、また平和創造における役割も不十分である。24これらは残念な実態ではあるが、紛争解決に向けた国連の主導的役割が否定されたわけではない。紛争の発展段階に対応した介入が適切に行われた場合、国連による紛争処理は成功を収めてきた。例えば、東チモール独立、アフガニスタン内戦、湾岸戦争、中米の停戦、ナミビア独立、カンボジア復興はその代表例である。25また、平和創造と平和構築の分野では、国家、NGO、個人などが国連に代わって活動を展開することもできよう。26国連が平和創造、平和構築において新しいアプローチを設定し、これら様々なアクター間のネットワークを築き上げる上で主導的役割を果たし得る。27さらに、全世界中に現地事務所が無数にある点で、国連の情報ネットワークには他の機関の追随を許さない強みもある。28また、国連には、多国間の集まりを通じて紛争当事者の政策判断や価値基準に影響を与えるという制度主義的機能が備わっている。例えば、99年夏の東チモール独立を巡る紛争では、国連を始めとするあらゆる国際的圧力がかけられた結果、ようやくハビビ政権は国連平和維持軍派遣の要請を決断した。一国の指導者に対してこれだけのプレッシャーを、二国間または地域機構だけでかけることには限界があろう。一度、政権側が受諾すれば、国連は唯一の権威ある国際機関として、内政干渉を避けながら紛争予防のために効果的な行動がとれるのである。もとより、国連は全ての紛争に無条件に介入すべきでもない。国連は、地城紛争に当事者として直接介入するには必ずしも適しておらず、むしろそうすればかえって国連の国際公共財としての性格を損う危険性さえある。29実際、多発する紛争を同時に扱い、実行の伴わない決議を蒔き散らしたため、安保理は近年、信頼性を著しく失墜させてしまった。30例えば、旧ユーゴスラビア危機に際し、安保理は95年までに100を越える声明や決議を採択していたが、その多くは全く首尾一貫せず矛盾していた。31そもそも国連が、その適性と能力を越えた過大な期待に応えることは非現実的である。安全保障理事会の異常な仕事量を考えれば、例えば湾岸戦争の際に傾注したのと同程度の注意や努力を、安保理24ステファン・ライアン、p.25225ステファン・ライアン、p.25426ステファン・ライアン、p.26227ステファン・ライアン28黒田順子29岩間陽子、p.1530エドワード・ラック、p.11631エドワード・ラック、p.116835