ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

冷戦後の紛争冷戦後の世界にはもはや国家間戦争はあまりない。米ソ代理戦争として長期間続いた地域紛争は収束方向にあり、イデオロギー紛争も影を潜めた。代わりに、最近の紛争は大半が国家の内部で発生しており、民族自決権、自治、民主主義、人権等を巡る紛争が目立つ。「民主主義の普及が平和をもたらす」という予見とは裏腹に、むしろ民主化プロセスが民族的感情や暴力に対する統制を奪い去り紛争の発火点となる場合が多い。2しかし、冷戦終了まで民族自決は単なる非植民地化運動として考えられていたため、このような新たな民族主義台頭に対する対応策は準備されてこなかった。3冷戦期から国際システムの基幹を成す「国家主権」の介在が、地域紛争への効果的対応策の構築を妨げている。ある研究によれば、領土や資源を巡る利害上の紛争は、価値観や相互関係に関わる紛争や国内の権力闘争よりも平和的解決が容易とのことである。4国際社会の機能は、前者の形態の紛争処理にはかなりうまく機能してきた。しかし、価値観の根本的対立に起因する紛争処理は、価値観自体が交渉不可能なため、たいへん困難となっている。国際社会が直面するチャレンジとは、解決が困難な価値観や宗教観を巡る国内紛争や内戦の問題にいかに対応し、難民流出を食い止め、地域の持統的平和と安定のための安全保障体制を作り出せるかという点にあるといえよう。紛争のサイクル:紛争と介入のミスマッチ最近の研究によれば、紛争にも生命があるとされる。5紛争は発生、形成、激化、長期化、和平交渉・対話の開始、変容という各段階を経て成長・進展してゆく。重要な点は、紛争の各発展段階に対し、適切な対応を国際社会が効果的に行いうるかどうかである。従来の紛争対応では、紛争段階と介入方法との間にミスマッチが生じてしまい、介入がかえって紛争を激化させてしまったケースが多い。介入は、事実解明や調停であっても、たいていの場合、時期を逸していた。6このため、例えばボスニアとソマリアにおいては、国連は介入時点から最悪の事態に直面していた。ボスニアでは、すでに内戦状態で中立・公平の8322クマール・ルペシング「序章」p.183クマール・ルペシング「序章」p.204ヒュー・アミル、p.1425 US Institute of Peace6クマール・ルペシング「序章」p.217浅田正彦、p.71