ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回佳作覚悟する必要がある。武力行使を禁じるために武力行使に訴えねばならないという自己矛盾を集団安全保障制度は内包するのである。第二に、諸国家の主観的条件の欠如である。諸国家が国際社会の利益を自国の国益より優先させ、犠牲を顧みず協力するならば、強制措置も効果を発揮するであろうが、現実には諸国家は制裁発動の当否を自国の国益の打算に基づいて決定するため、制裁の発動は困難となり、たとえ発動されても足並みが揃わず効果が挙がらない結果を招く。また、朝鮮戦争のように一部の国家のみが軍事行動に参加し、多くの国が傍観的立場をとれば、国連行動は、軍事同盟に変質する可能性を持つ。以上より、冷戦が終焉しても集団安全保障体制には多くを期待できないこと、また、その問題点の解決は現状では不可能に近いことが理解される。この客観的・主観的条件の欠如を少しでも補い、集団安全保障体制を実効的なものにする為には、加盟国が憲章に定める特別協定を締結し憲章上の正規の国連軍を創設すること、またその経費分担を実質的平等に基づき各国の経済力に応じて割り当てることが要請されると考える。これで少なくとも軍事的強制措置に関する限りは、国連が迅速な行動を起こすことが可能となり、現状よりもその役割の遂行が容易となろう。強制措置を中心とする集団安全保障体制に代わり、冷戦下の国連の実践から生まれた平和維持方式として国連平和維持活動(PKO)が挙げられる。PKOは国連憲章の予想していなかった活動であり、その憲章上の根拠に議論もあったが、その後国連の活動として定着した。最近では湾岸戦争後の国連監視団(UNIKOM)等その活躍には目覚ましいものがあり、1988年にはノーベル平和賞を受賞するなどその国際平和と安全維持に対する貢献の評価は高い。PKOは、故ハマーショルド事務総長の唱えた「防止外交」と密接に関連している。防止外交とは、対立する主要ブロック間の力の真空状態により生じた危険な情勢に対して、国連がいち早く介入し、それによって真空をうめることにより衝突を避け、緊張を緩和するという外交である。PKOはこの精神に基づき、現地政府を含む関係国の同意を得て平和を脅かす危険な事態に介入し、一定の軍事組織を現地に派遣し休戦監視や治安維持を行うことにより(国連機関の現地介在;UNプレゼンス)、事態の平穏化に貢81