ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回優秀賞「最近見うけられる民族紛争と国連の果たし得る役割」古川勝久1992年にブトロス・ガリ前事務総長が「平和への課題」を発表してから、平和維持機構としての国連に対して大きな期待が寄せられたが、その後国連は多発する地域紛争や内戦に効果的に対応できず、信頼性そのものが問われるケースが増えている。たしかにこれらは残念な実態ではあるが、紛争解決に向けた国連の主導的役割が否定されたわけではない。紛争の発展段階に対応した介入が適切に行われた場合、国連による紛争処理は成功を収めてきた。例えば、東チモール独立、アフガニスタン内戦、湾岸戦争、中米の停戦、ナミビア独立、カンボジア復興はその代表例である。もとより、国連は全ての紛争に無条件に介入すべきでもない。国連は、地域紛争に当事者として直接介入するには必ずしも適しておらず、むしろそうすればかえって国連の国際公共財としての性格を損う危険性さえある。国連が、その適性と能力を越えた過大な期待に応えることは非現実的である。長期的視点に立てば、国際平和と安全の確保のためには、まず何よりも唯一の世界機構としての国連への信頼回復とその正統性維持が不可欠である。このためには、数多くの成功を求めて大きな失敗を繰り返すよりも、数少なくとも確実に成功を治めてゆくべきである。国連の能力と限界、そして紛争当事者の能力と意思を判断した上で、様々な紛争に対し選択的に介入することこそが国連にとって現実的なアプローチと思われる。過去の失敗のケースを分析すると、いくつかの問題点を指摘できる。早期警報システムが脆弱なため、紛争段階と介入方法との間にミスマッチが生じ、介入がかえって紛争を激化させた。オーバー・コミットメントのため、財政危機が深刻化し、要員不足・装備不足や事務局の混乱等の問題が発生した。平和維持活動に軍事強制活動を結合する「複合的ア827