ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第9回佳作に対する根強い不信感が生まれていた。その影響もあって国連憲章51条には集団的自衛権が規定されたが、この規定は従来同盟条約の締結により行われていた共同防衛を、集団的自衛権の名において自衛権の中に取り込むことを可能としたのであった5。事実、冷戦開始後、地域的取極・機関(52条)として発足した北大西洋条約機構(NATO)とワルシャワ条約機構は、実質的に東西各陣営の軍事同盟的色彩の濃いものであり、それは国連の安全保障体制を一層弱体化させるものであった。冷戦中は、核の抑止力理論に基づく軍拡競争が生じ、軍事技術の発達による軍備の質的増強を招いたことも見逃せない。(3)冷戦後の安全保障体制と国際社会冷戦は国連の集団安全保障体制を機能不能に陥らせたが、それでは冷戦終焉により国際社会はどのように変わったのであろうか。注意すべきことは、ソ連崩壊後の東欧の民族紛争やカンボジアの現状からも分かるように、冷戦終焉は武力衝突及び戦争の危険を減少させはするが、決してそれ自体が国際平和をもたらすものでないということである。従って、国連の最も重要な理念と役割は、依然として国際の平和及び安全の維持にあるということである。そこで国際情勢の変化と過去の反省に基づき、国際平和と安全を念頭に置きつつも、それを更に充実・発展させた新しい理念を如何に設定し、それを国連によりどう実現していくかということの検討が急務であると考える。そのためには、第一に、冷戦終焉により集団安全保障体制は十分機能するものとなるのか、第二に、冷戦下の集団安全保障体制の補完として実戦されてきた国連平和維持活動(Peace Keeping Operations ? PKO)は冷戦後は如何に評価され位置づけされるべきか、第三に、現在の国際社会における紛争の原因、平和を脅かす原因は何か、の三点が検討されなければならない。国際社会の現状に即した検討を通して新しい理念が設定され、その実現に向けて国連がなすべき役割が浮かび上がってくるものと考える。冷戦終焉により集団安全保障体制は当初の予想どおり効果的に機能し国際平和と安全維持に寄与しているであろうか。残念ながら答えは否である。確かに、1989年以来の東西5前掲・国際法概説71頁。79