ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回最優秀賞なることも増えている。また、活動に参加する国家そのものが増えている。一方で、例えばソマリアにおいては、先に指摘したUNITAFにおけるアメリカとの意見の対立に加え、UNOSOMⅡにおけるイタリア部隊との意見の相違が指摘されている(66)。また、UNOSOMⅡの中枢人事がアメリカ人だったため、実質的にはアメリカが指揮権を持っていたという指摘もある(67)。さらに、各国から提供される要員の訓練の程度の違いや、言語など意思疎通能力の違いを指摘する声もある(68)。それぞれの活動において、任務をどのように展開し、各国から提供された人的・物的資源をどのように統制・調整するかは、国連が限られた能力でいかに実りある成果を挙げるかに関わってくると考えられる。まとめ以上のように、本論の考察をもとに冒頭の論点について考察した。本稿では、全体的に国連の限界や問題点の指摘が目立つ結果となったが、それはむしろ意図的であったといっても過言ではない。筆者は、紛争解決において普遍的国際機構として国連の重要性は変わらず、またそれは民族紛争をはじめとする内戦に関しても同様であると認識している。その中で、現在何が問題であるかを認識すること、またその問題点を検討することは、今後の国連の紛争解決に関する活動にとって重要であると考えるためである(69)。また、失敗の要因をその状況の下での特別なことと考えるのは、成功の要因を全ての状況に当てはまると考えることと同じくらい危険なことである。ソマリアの事例を取り上げたのは、その検討において議論すべき事項が多く、しかもそれらが今日の国連の活動に少なからぬ影響を及ぼしていると考えたからに他ならない。最後に、本稿での考察を通して、筆者は、国連の民族紛争をはじめとする内戦への介入、特に「人道的介入」に関する一番の問題点は、それに関する基準や加盟国の間でのコンセンサスが存在しないことである、という指摘の重要性を顕著に認識した(70)。国連が紛争、特に民族紛争をはじめとする内戦の解決に関わる以上、介入の目的設定や介入方法に関し、実際に活動を行う加盟国の問で一定のコンセンサスが成立することが不可欠である。779