ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

和に対する脅威」と解釈することも可能ではある。さらに、内戦の揚合、国連憲章第7章に基づく認定によって実施される武器禁輸措置などの措置が、実効性を持つことも考えられる。しかし、明らかな侵略などと違って、どのような場合が「国際の平和と安全に対する脅威」であると認定されるのかについて、今後検討される必要があるといえる。第2点は、内戦において純粋な「人道的介入」が可能か否かという点である。その第1の理由として、飢餓や深刻な人権侵害、難民の大量発生といった人道的危機を改善するために、「人道的介入」が国連による介入の根拠とされる場合、内戦においては支援物資を略奪したりすることが紛争当事者の戦略となっているため、ある人々に人道的支援活動を行う、あるいはその活動の保護を行うこと自体、ある紛争当事者を敵に回し、結果的に紛争当事者から国連の公正性を疑われる危険性があるからである。また第2の理由として、国連が(それは特に安保理であるが)、どういう事案を「人道的介入」の必要性があると判断するかという基準が明確でないため、国連の「人道的介入」という目的が、加盟国の政治的動機による介入の「表向きの理由」として使われたり、明確な介入目的や加盟国の意思がない場合、マスメディアの影響を受けたりする危険性があるからである。例えばソマリアの場合、ソマリアにアメリカが介入した根拠として、「人道的」な目的ならば、コストが安く、また短期間で終わらせることができるという見込みがあったという指摘や、ソマリアにおけるアメリカの介入及び撤退を決定づけたのは、マスメディアの報道に基づく世論であったという指摘がある(57)。従って、「人道的介入」という概念には、特にその対象が内戦の揚合、国連が、平和創成など内戦の平和的解決のための政治的活動と、人道的危機を回避するための人道的活動双方を行うことの妥当性と、主権国家の集まりであり政治的機構という側面をも持つ国連が、人道的危機を根拠として介入することの妥当性の2点について問題があるといえる(58)。さらに第3点として、「人道的介入」の任務として活動する場合、国連が武力を用いることが妥当であるかという問題がある。それは上述の公正性の問題や正当性の問題に加えて、特に人道的見地からの介入の中で、人命を犠牲にする可能性を見込んでもさらに武力776