ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

国連による内戦への介入まず、今日国連が関わる紛争について概観すると、国家間紛争よりも内戦が顕著になってきている(45)。その背景としては、冷戦の崩壊によって、もともと対立の火種として存在していたものの、冷戦期には東西対立の下で抑えられていた対立が表面化したことや、冷戦の崩壊やグローバリゼーションによって国内の状況が不安定になり、それにもともと存在した国内の不安定要素が結びつくことなどが挙げられる(46)。また、内戦の原因としては、民族・部族間の対立や、経済的・政治的支配権の争奪などがあり、これらの原因は複数の要素が絡み合って紛争をより複雑にしているケースが多い。さらに内戦の特徴として、紛争当事者の特定や調停・仲裁が国家間紛争と比べてより困難になっていること(47)、多くの紛争の原因に冷戦期の東西陣営の関与が指摘されること(48)(49)、内戦の非人道性の3点が主に指摘される。それに伴い、国連の対応は主に以下の2点において変化したといえよう。それは、紛争当事者の特定や仲裁・調停が困難になったことが、紛争の早期解決を妨げていること、国連が扱う事案が増加・多様化したことから、対応も多様かつ複雑になったと考えられることである。これらの変化は、もともと国家間紛争を想定して設立された国連が、内戦に対しいかなる目的で、またどのような方法で介入すべきなのか、あるいはできるのかという課題を生じさせている。そして現在の段階で認識できることとして、筆者は主に以下の3点が挙げられると考える。まず第1点として、内戦は原因が複雑で、特に民族紛争においては歴史的背景を伴っていることが多い。また、内政不干渉原則が、紛争当事者によって外部からの介入を拒む理由として用いられるなど、内戦に早期から介入できる可能性は低いといえる。これらの理由から内戦が長期化する傾向がある。しかし、一国内の問題である内戦を、武力を用いて強制的に解決するなど、短期聞で事態の収束を図るという政策は、ソマリアをはじめとするいくつかの内戦において成功することはなかった。従って、国連に求められるのは、むしろ平和創成を中心とした長期的視座に立った対応であるといえる(50)。一方で、第2点として、介入に当たっては各任務が明確にされる必要がある。各任務は、774