ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

ならなかったという指摘がある(36)。従って、紛争後の社会再建などがPKOの任務の柱となっている場合、それと強制力を伴う平和強制とを両立させることは非常に困難といえる。また、実際問題として、この大規摸な任務を今日の国連加盟国が1つの紛争において負担することができるかという問題がある。それは、コスト面での能力と同時に、加盟国の政治的意思がそれを左右するからである。国連は、長期化する可能性のある紛争に介入するにあたって、必要とされる活動と、各加盟国によってもたらされる能力との間に折り合いをつけなければならない。第2の問題点は、1993年6月にUNOSOMⅡのパキスタン兵がアイディード将軍側に攻撃されて以降の「当事者化」の問題である(37)。上に述べたとおり、UNOSOMⅡには設立当初から平和強制機能が課され、その実施には、その是非を巡る議論が展開された(38)。そして、実際にはUNOSOMⅡの平和強制がアイディード将軍との敵対に発展し、アイディード将軍逮捕を試み、それが失敗してUNOSOMⅡ要員にもソマリア市民にも犠牲者を出した結果、UNOSOMⅡはその目的を達成せずに撤退に至った(39)。このUNOSOMⅡの失敗は以下の3つの影響をもたらした。まず、ソマリアに対する影響としては、UNOSOMⅡ撤退を期に、国連が一連の積極的介入を事実上終了したことである。そして、人道面ではやや改善が見られたものの、ソマリアには国連の介入以前と大差のない政治的混乱が続いている。むしろ、UNOSOMⅡの「当事者化」によって、国連は公正性を疑問視されるに至ったため(40)、国連がソマリア内戦の平和創成に関与することはUNOSOMⅡ派遣前に比べて困難になった(41)。次に国連に対する影響としては、UNOSOMⅡの失敗は、それまでのPKO拡大傾向から縮小傾向に転じる決定的要因となったといえる。PKOの派遣目的、任務が見直されると共に、各加盟国がPKOをはじめとする国連の紛争介入に参加する基準を自国の利益にかなうか否かという点に定める傾向が強くなった(42)。さらに、国際社会に対する影響としては、国連がUNOSOMⅡの失敗から内戦への介入に消極的になった結果、本来ならば介入されるべき状況で介入しなかったり(43)、あるいは国連の限界が示された結果、国連、特に安保理を介さない強制的介入が772