ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
769/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている769ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

第16回最優秀賞国連の第2の介入目的はソマリア内戦の平和的解決だった。そのために、まずは周辺諸国や地域機関が仲介を試み、国連のガリ事務総長(当時)によって任命されたモハメド・サヌーン特別代表(SRSG)を中心として調停を行う一方で、安保理決議で内戦の平和的解決を呼びかけた。また、アリ・マハディ氏とアイディード将軍をはじめとする紛争当事者によって停戦が合意された後は、UNOSOMⅠを派遣することで平和維持を試みた。しかし、これらの方法は、停戦が破られやすく、交渉相手である紛争当事者が明確でないといった内戦という状況下で、紛争当事者に停戦の合意を守らせることがいかに困難であるかを証明することとなった。また、UNOSOMⅠやUNITAFが派遣される一方で行われた平和創成は、人道的支援活動の円滑化のための努力と比べると不十分だったという指摘もある(21)。一方、UNITAFによって治安が回復し、アディスアベバ合意(22)に基づいてUNOSOMⅡが新たに設立されたが、結果的にこのUNOSOMⅡは、内戦の平和的解決のための平和維持やソマリアの社会再建というよりは、国連に敵対し攻撃をしかけてきたアイディード将軍に対する懲罰的対応をするに至り、一紛争当事者として戦闘に及んだ結果、内戦の平和的解決が困難となった。国連を中心としたソマリア介入のこれら2つの目的は、冷戦後の民族紛争に対する国連の活動においてもしばしば目にするものである。しかしながら、これらの目的が成功裡に達成されるか否かはその方法に依る傾向にあり、またその方法が紛争当事者や国連加盟国に認められるかに依っているともいえる。次に、そのソマリア介入の方法に関しては、全般的に指摘すべき点は主に3点が考えられる。まず第1点は、そもそもソマリア内戦が本格化すると共に、人道的危機が深刻になる以前の国連のプレゼンスの問題である。ある研究者らは、1980年代における国連機関による食料援助が多すぎたため、ソマリアの社会構造がいびつに変化したと指摘している(23)。また、内戦が発生し、人道的危機が深刻となりはじめていた1991年当時、国連がソマリアのオフィスを閉鎖し、ソマリアにおいて国連、特に人道援助機関の支援がもっとも必要であった時期にいなかったという指摘もある(24)。もちろん、1980年代の国連機関に767