ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

いるが、地球規模での安全保障を確立していく上では平和維持活動は不可欠な国際公共財である。さて、ソマリア、旧ユーゴの二つのケースから得るべき教訓は、現行の制度では状況次第で平和維持軍が平和強制に「移行」しうる危険があるということである。ハマーショルドの「研究摘要」などで平和維持活動の原則とされているものに「武器の不使用」原則がある。この原則には「自衛」のだめには使用してよいという例外が存在し、この自衛の概念には任務遂行に対する妨害も含まれているというのである(16)。任務如何によっては武器の使用が認められる事態を作り出すことも可能なのである。武器の使用の制限に関する確固としたガイドラインを作っていくべきである。また平和維持活動のあり方の関連で最近問題となっているのが地域機関との連携である。予算や人材の制約等から地域的な平和維持活動も有効に利用すべきではあるが、平和維持活動の存立基盤として不可欠な「中立性」に疑問が残る。UNOMILやUNMOTのように地域機関に平和維持軍を派遣してもらい、その中立性をモニタリングする方法も考えられるが、正当性の観点からはやはり国連の平和維持活動がより効果的で望ましい。国連は各国から拠出される平和維持部隊に国際的正当性を付与し、同時に活動の統制・調整・国際的分担についてのコンセンサスづくり、専門的知識の供与を行うことができる。内戦で当事者の一方が正当政府で、他の当事者が反政府団体である場合、和平交渉が難しいが、エルサルバドルの例や、カンボジアの例のようにこれまでも国連は内戦終結に向けて大きな成果を残している。主権国家の相対化の中で内戦はます増す増加する傾向にあるが、従来の経験を活用することができるだろう。さて、もう少し広くこの問題を捉え、紛争後の平和構築までの一連の流れの中で、政治、人権問題、社会・経済問題、さらには開発が複雑に絡み合う状態にいかに対処するかをも問題にしなければならない。幅広くNGO諸団体も含めた上で、人道援助機関、開発機関と連携した活動体制を確立する必要がある。縦割りの発想を改め、機関間の協力体制を築いていくことが不可欠になるだろう。752