ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回佳作第一に、「ヒューマン・セキュリティー」や地球規模の問題では、従来の国家中心主義では十分対応できず、国家の枠を越えた対応が必要であること、第二に、国家、国連などの国際担織に加え、NGO、NPO(民間非営利団体)、市民組織、多国籍企業などの協力がますます必要となってきていること。第三に世界連邦や世界政府を意識したものではなく、さまざまな国際的組織の協力、連携によって問題に柔軟に対処すること。この様なグローバル・ガバナンスの考え方を具体化した「国連衛星共同体」(UNSC)の目指すところは、グローバリゼーションの流れの中で、人間の尊厳と人権の尊重のもとに、日常生活の場での「国境なきヒューマン・セキュリティー」を確かなものとし、地球世界に「真の平和と安全の新世紀」を迎えるようにすること、そして未来の世代に人類共有の遺産を正しく伝えるようにすることである。そこで、私達は地球上の幾多の戦争と環境破壊という20世紀の苦い体験を踏まえ、「新しい文明と精神」の形で、一体どのような遺産を未来の世代に伝えることが出来るだろうか?未来の世代に遺産として伝えるべき人類文明に関していえば、サミュエル・ハンチントン教授が論文「文明の衝突」を発表して以来、文明の多様性と普遍主義の問題が広く議論され、国家と国家の衝突に代わって文明と文明の衝突の危険性が警告されてきた。確かに、グローバリゼーションの進展に伴い、市場の担い手と枠組みを国家に代わって文明単位でまとめることには説得力がある。だが市場の合理性は、非合理的な文化や習俗のしがらみに必ずしも執着しない。人類が存続し得るかぎり、“正”と“負”のグローバリゼーションは互いに絡み合い、文明の枠組みをすら超越して、個人と地球世界、その間に存在する国家それぞれに光と影を投げかけながら、新しい地球文明の歴史を創っていき、それなりに各国のアイデンティティーと伝統文化に影響を与え続けるのだ。弱肉強食の大競争時代に突入した今、新しい精神文明を真剣に模索する動きが大きくなってきており、創造性豊かな英知と変革のための実行力が切実に求められている。人類の歴史は、幸運な強者は知恵を絞り、勇気と決断によって危機を回避し、克服して生き延び、繁栄の機会を掴んだことを教える。つまり、「ヒューマン・セキュリティー」の要締は、731