ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

ページ
732/912

このページは 佐藤栄作論文集9~16 の電子ブックに掲載されている732ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

佐藤栄作論文集9~16

に向かって共に歩み協力することを励ますことで実績を積み重ね、「頼りに出来る国連像」を確立していくことが必要である。そこで、著しく増大している加盟国間の利署調整という従来型の役割に加えて、国連は英知と実行力、そして資金力を備えることにより、加速化する“正”と“負”のグローバリゼーションの光と影の内に見え隠れする地球規模の緊急課題に対してチャレンジするという新しい役割を担うべきである。そのためには、第一に、一層複雑化・多様化した「国際社会の平和と安全の維持」という国連の創設目的を「ヒューマン・セキュリティー」という視点から改めて捉らえ直すこと。第二に、従来型の国連を中心母体にして、世界銀行やIMF(国際通貨基金)など各国際機関や国際企業、国際NGO、大学、シンクタンクなどを加えた、サテライト型の国際機構、すなわち「国連衛星共同体」(UNITED NATIONS SATELLITE CONSORTIUM:UNSC)を創設すること。第三に、新しい理念と新構想の下に各国際機関の能力、資金、活動経験を結集し、創造的・包括的なアプローチによって新たな国際秩序を再構築すること。これこそが人類の希望と期待に応えるために国連が果すべき新しい役割である。ところで、「ヒューマン・セキュリティー」(人間の安全保障)という概念は、国連開発計画(UNDP)が<人間開発報告書1994>で提唱したものであり、その主張点は、冷戦構造の終結を成し遂げた今日、従来の「国家の安全」だけでなく、人間の尊厳と人権を重視した「人間一人ひとりの安全」をも真剣に考えるべきだということである。人間一人ひとりが国家間で作られた国境線に関係なく、地球環境である「外なる白然」と、生きる自己の「内なる自然」の双方から暮らしの平和と安全を脅かされて、大きな危機意識と不安に襲われた精神的、心理的な状態を「ヒューマン・クライシス」とすれば、「ヒューマン・セキュリティー」はそれのアンチテーゼであり、人類共通の重要課題である。この「ヒューマン・セキュリティー」を中心命題に位置付けた国連を中心とする「国連衛星共同体」(UNSC)の構想は、グローバル・ガバナンスという考え方に対応するものであり、一般につぎの三つの要素があるとされる。(#5)730