ブックタイトル佐藤栄作論文集9~16

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概要

佐藤栄作論文集9~16

第15回佳作3.国連の果たすべき新たな役割─「ヒューマン・セキュリティー」の視点から─1945年に「国際社会の平和と安全の維持」を目的として創設された国連は、突然の冷戦構造の崩壊により、冷戦時代の東西スーパーパワー対決の試練を経て、「恐怖の均衡状態」からやっとのことで脱却したのである。そして、冷戦後のグローバリゼーションの潮流は、民間企業の国境を超えた自由競争を促進する一方で、国家と国家の武力対立に代わって国家間の相互依存開係を急速に高めた。その結果、国連の重要な役割である従来の「平和と安全の維持」の在り方も大きな影響を受け、国連の新しい役割がその機構改革の論議とともに真剣に求められるようになった。小和田国連大使の言葉を借りれば、「現在の世界は、すべての国が一緒になってカを合わせなければ秩序を維持出来ないという『国際協調による秩序維持』のシステム─paxconsortisとも呼ばれるもの─によっている」(#4)のである。だが、このシステムで国際秩序を維持することが困難であることは明らかだ。歴史的にみて、国連は主権国家間の調整機能を持つ機構とし存在しており、その役割の範囲に在る限り、加盟国から収められる分担金で運営し、国連のルールに従って意思決定をしなければならない。冷戦構造の終結後、人類社会と国連を取り巻く環境は、民主主義の目覚ましい増大、世界の経済構造の大変容、インターネットや宇宙開発、生命科学や最新医学などにみられる科学技術の目覚ましい発展、その一方で人口問題、環境問題やエネルギー問題の深刻化など人類の存続を脅かす幾多の危機に見舞われており、“正”と“負”のグローバリゼーションの潮流の中、人類はいまや国家を超えた新しい国際機構の創設を切望している。ただ、いま最もグローバルな組織体として調整機能を発揮し、問題解決に具体的な成果を上げているのが正に国連であり、主権国家の総合体として今や185カ国の加盟国を擁する国連に代わり得る国際機構は存在Lない。従って、少なくとも近未来はナショナル・アイデンティティーを保持し続ける各主権国家の国民のニーズと声を各国家を介して適切に集約して各々の利害を適切に調整し、人類の歩むべき道を方向付け、各国が同じ目標729